「日本の少子化問題について」ジェイソン・モーガン

前回のブログに続き、麗澤大学准教授ジェイソン・モーガン氏の産経新聞「正論」欄に書かれた記事「『プロ・ライフ』で日本の良さを」をご紹介します。

 

日本の少子化問題について、現在の日本人は、結婚したくない、子どもが欲しくない、極端に言うと生き続けたくもない、生きがいが分からなくなってきてしまった国民になっていないか。

それはなぜ?

お金がないから?政府の援助がないから?

違うだろう。

現在の日本人が生きがいを忘れた理由は、実はお金と関係ない。尊厳ではないか。

日本は今まで日本の尊厳を守ることをしてこなかった。それが問題だと指摘されているのだ。(仁)

「プロ・ライフ」で日本の良さを 麗澤大学准教授 ジェイソン・モーガン

麗澤大学のジェイソン・モーガン助教(斎藤良雄撮影)
麗澤大学のジェイソン・モーガン助教(斎藤良雄撮影)

「プロ・ライフ」は、外来語だからちょっと聞き慣れていない方もいらっしゃると思う。あらゆる人間の命、尊厳、存在する価値を尊重し、受精卵の時から自然に亡くなるまで、人を大切にするスタンスを指す言葉だ。簡単に言うと、プロ・ライフ(pro-life)はライフ、つまり「生命」を肯定的に考えたり行動したりすることを意味する。

≪命、尊厳を大切にする言葉≫

長年にわたって日本に滞在してきたが、何回も聞かれたことがある。どうして日本が好きか、と。答えやすそうな質問だが実はとても答えるのに困っていた。理由がありすぎて答えられないと、ごまかして答えたときもあるけど、数年前に本当の答えにやっとたどり着いた。日本が好きな理由は、日本人が好きだからだ。

この国の特徴はいっぱいあって、例えば四季も景色も自然もとてもいい。が、それだけでは日本は、日本ではない。日本人がここにいるからこそ常にこの国に戻りたい。

プロ・ライフは、日本でめったに耳にしない言葉だが、それはちょっと不思議に思う。なぜかと言うと、日本ほどプロ・ライフの国は多分ないからだ。あらゆる生命を尊重し、皆をウエルカム(歓迎)することが正に日本人のこころだ。この国は大昔から、自然にプロ・ライフを日々に生きている国だとも言えよう。日本人の良さの核は、ここだ。

日本人が大好きだから、少子化高齢化が加速する日本社会を見て悲しい気持ちになる。このような少しずつ枯れていく社会の中で、日本人の数を増やしたいと言っている日本政府を支持したい。プロ・ライフ、そして日本を尊ぶプロ・ジャパンの観点から、もちろん私も日本人の数がもっともっと多くなってほしい。

しかし、やはり政治と社会とのギャップを感じるときもある。この間、政治家が日本の人口問題について演説をしたときに、聴きに行った。正直なところ、非常に違和感を覚えた。その政治家は、日本人の数が増えてほしい、と口で言っていたけど、考えてみると、その理由は残念に思った。プロ・ライフでも、プロ・ジャパンでもないからだ。

≪日本人は生きがい忘れたか≫

その政治家は、どちらかというと、ただプロ・納税者だ。日本人の数を増やしたいというよりも、税金を払ってくれる人の数を増やしたい、と言うのが本音に近い気がする。お金をばらまけば子供が増えるのだろうか。

現在の日本人は、結婚したくない、子供がほしくない、また極端に言うと生き続けたくもない、生きがいがわからなくなってきてしまった国民になっていないか。それはなぜ? お金が足りないから? 政府からの援助がほしいのにもらえないから結婚、出産、生存をやめる?

ちょっと違うでしょう。現在の日本人が生きがいを忘れた理由は、実はお金とは関係ないと思う。はるかにもっと深いレベルで探さなければならない。お金じゃなくて尊厳のことではないか。

歴史問題などで何回も侮辱されたら、結局それを信じてしまうケースが少なくない。

日本社会の少子化問題は、ここにあると思う。ずっと前から日本人がダメな国民、日本がダメな国だといわれてきた揚げ句、生きる勇気、生きる自信さえなくなったとも言えよう。日本人は、お金が足りないから子供を産んでいないのではなくて、誇りが足りないからだ。政治家が今更、少子化問題を解決しようとしている動きを見ると、後の祭りだと感じる。

≪最終的には「こころ」で動く≫

日本国民が、まわりの国に、そして国内の左翼に侮辱されていても、日本国政府がずっと反論しなかった。「ちょっと待って。日本はすてきな国です。日本人は素晴らしい国民ですよ」と中国、韓国、北朝鮮、アメリカ、国連、そして日教組、NHK、朝日新聞などに強く主張してほしかった。かばってほしかった。

でも何も言わなかった。日本人が罵倒されているときに、日本政府は「無言」でいた。

少子化、高齢化などの人口問題は、そもそもお金で解決できるはずがない。そう思っている政治家は人間、とりわけ日本人のこころをちっとも理解できていない。人は、特に日本人は、こころで生きる生き物だ。物理的な側面もあるが、精神の面がやはり大きい。こころは、お金ではなくて、愛、尊敬、助け合い、意義、真実を受けて存在する。

文豪、文学者たち、小泉八雲も夏目漱石も川端康成も、そして西行も紫式部も、皆分かっていたのは、日本人は、まずは、そして最終的には、こころだ。この国の一番美しいポイントは、日本人のハートだ。ハートは、マネーで動くわけはない。

日本政府よ、日本人の名誉を守ってください。日本人のこころを大切にしてください。プロ・ジャパンは、結局プロ・ライフだ。本当の日本の再興は、こころから芽生えるしかない。