地獄をまき散らす中国

8月6日付産経新聞の記事「モンテーニュとの対話」から抜粋。驚くべき内容の証言です(仁)。

 

『重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて』(草思社)を読んだ文化部の桑原聡氏の読後感。

著者のサイラグル・サウトバイさんは1976年に中国の新疆ウイグル自治区に生まれたカザフ人女性。

大学で医学を学び医師として働くものの、家庭の事情でやめる。結婚し2人の子供を授かった彼女は幼稚園の園長として働いていたが、自治区の状況は漢族以外の民族にとって地獄のようになってゆく。最新技術を駆使した監視体制の構築、母国語の禁止、信仰と伝統文化の破壊、そして臓器狩り・・・。

ある日のこと、彼女は再教育収容所、すなわち少数民族殲滅のための強制収容所に連行され、そこで収監者に中国語、中国文化、習近平思想などを教える教師を命じられる。5ヶ月後その職を解かれるも、今度は自分が収監者のリストに入っていることを知る。収容所では漢化を強制する洗脳教育だけでなく、拷問とレイプが日常化していた。収監されれば、その先にあるのは死のみ。彼女は決死の覚悟で夫と子供2人が待つ隣国のカザフスタンに脱出する。

ただ、中国に経済的支援を仰ぐカザフスタンも安息の地ではなかった。不法入国の罪に問われて拘束された彼女は、18年7月に3回法廷に立たされ、そこで自治区で進行中の恐るべき実態を詳細に証言した。

そのニュースは瞬く間に世界を駆け巡る。裁判後の19年6月、彼女は国連のはからいで家族とともにスウェーデンに政治亡命し、中国政府によるジェノサイドについて積極的に発言を続けている。その自宅にはいまもなお、脅迫の電話が頻繁にかかってくるという。「子供の身のためを考えろ」。

著書の最後でこう訴えている。

《自由世界に対する中国発の”心のウイルス”の攻撃はやまない。私が願うのは、中国共産党と北京政府が脅かしているのは自国民だけでなく、地球上の全ての国の人々なのだという事実を世界の人達に気づいてもらうことなのだ。このウイルスはCOVID19よりも遥かに危険なウイルスだ。 /地獄/それがこのウイルスが運んでくる現実にほかならない》