河添恵子著『習近平が隠蔽したコロナの正体』を読んで(1)

新型コロナウイルスが中国の武漢で発生し感染者が出ている、と日本でも騒がれ出したのが2020年1月末ごろだった。それから1年以上にわたり感染に怯える日々を送っている。最近はワクチン接種が進み重症化する人数も減少してきたとはいえ、何か釈然としない気持ちを多くの人が抱えているのではないだろうか。

「発生の原因は実のところ何?」「いったい誰の責任か?」本当のことを知りたい、と。

ノンフィクション作家の河添恵子氏はそこに果敢に挑み、『習近平が隠蔽したコロナの正体』を昨年著した。その後も月刊誌等で発言を続けている。その概略を「新型コロナウイルスの正体」「習近平の隠蔽工作」「中国と諸外国の複雑な関係」「世界は中国へ反撃を開始した」の4つに分けて説明していく。

「新型コロナウイルスの正体」

  • 新型コロナウイルスは天然なのか、人工なのか

日本ではいまだに“武漢の海鮮卸売市場のコウモリから感染した”という物語がまかり通っている。しかし遺伝子構造が異なるコウモリのウイルスが自然に人間に感染することはない。

河添氏はアンソニー・トゥー(台湾名:杜祖健)博士(天然毒研究の世界的権威)とメールのやり取りをし、また大量の情報分析から「人工」であると確信する。それは以下に示す武漢ウイルス研究所の性質による。

  • 武漢ウイルス研究所と研究内容

武漢には「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」(以下、武漢ウイルス研究所とする)が2か所ある。武昌区と江夏区(江夏区の方が新しい)にあり、江夏区には「P4実験室」がある。

「P4」や「P3」とは「細菌・ウイルスなど微生物・病原体などを取り扱う実験室・施設の格付け」で、「生死に関わる重篤な事態となり、人から人へ感染し、治療法や予防法が確立されていないエボラウイルス(P4レベル)やSARS(P3レベル)などを研究する実験室」を意味する(P4レベルが最も高い)。

この「P4実験室」の石正麗(せきせいれい)主任を中心とした研究チームが2015年11月、米科学雑誌『Nature Medicine』に発表した論文がある。その内容は「コウモリから抽出したSARSウイルスを、種の壁を越えて感染させる研究」であり「SARSウイルスに手を加えることでネズミの呼吸器にダメージを与えるウイルスの開発に成功した」というものだった。

先の論文を見たアメリカ・北カロライナ州の医学研究団体が、石主任の研究チームと一時、提携を結んだことがあった。その際、「コウモリから抽出したコロナウイルスを人間の細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と融合する実験に成功した」という内容の論文を見た。これをアメリカのCDC(疾病管理予防センター)では「自然界に存在しないウイルスをつくるのはモラル違反であり、生物兵器に転用しかねないリスクを推測した」としている。

  • 武漢ウイルス研究所および関連施設近くで感染した事例

2019年12月30日には武漢の李文亮(りぶんりょう)医師ら数名の医師が、SNSの投稿で新種のウイルス性肺炎のアウトブレイク(大流行)を警告していた。

李医師は新型コロナウイルスで2020年2月7日に亡くなられた。李医師は武漢市中心医院の眼科医だったが、同医院では彼を含む5名の医師が他界している。武漢市中心医院は「武漢市疾病予防管理センター」に近い位置にある。

2020年2月の『自由時報』では、武漢ウイルス研究所の女性研究員、黄燕玲氏が0号の感染者ではないか、と報道している。黄氏は2019年の未明から行方不明である。石正麗主任は「黄燕玲という名前の研究員は把握していない」と言ったそうだが、選ばれた数少ない研究員を知らない訳がないのである。

最新情報では(河添恵子氏『WiLL』2021年10月号)、2021年8月12日、WHO調査団トップのピーター・ベンエンバレク医師が「新型コロナウイルスの患者ゼロ号は、武漢ウイルス研究所の職員の可能性がある。研究現場で感染したというのが有力説の一つだ」と発表した(ようやくテドロス事務局長の呪縛から抜け出てきたようだ)。(和)