朝日新聞的教育観の崩壊(二)山之邊雙

山之邊雙氏よりの寄稿を掲載いたします(仁)。

 

朝日新聞的教育観の崩壊(二)   山之邊雙

 

入試改革はすればするほど悪くなる。かつて三木内閣(昭和四十九年から五十年まで)に、永井道雄という文部大臣がいた。なんと朝日新聞の論説委員だったのを三顧の礼で迎え入れたのだ。私は、政治と言論の癒着だと憤ったものだ。そのせいで、朝日は三木内閣に好意的だった。

永井氏は、せっかく民間から閣僚になったのだからと張り切り過ぎ、「なんでもいいから実績を作ろう」と思い立って、「共通一次試験」を始めた。その後、「センター試験」に変わり、さらに去年からは「大学入学共通試験」になったはずだが、コロナで混乱して、今どうなっているかはよほどの専門家でないと分からない。

今では、六十歳以上の心ある人はみんな、「昔の一期校二期校の時代がよかった」と言っている。

永井道雄が日本の大学入試をめちゃめちゃにしてしまった張本人であることは間違いない。

 

昭和の御代からつねづね、「日本の大学は入るのが難しく、出るのがやさしい。アメリカのように、入るのをやさしく、出るのを難しくすべきだ」という意見が世を席捲していた。

この意見には大きな陥穽(かんせい/落とし穴)が二つあった。

 

第一に、前提が間違っている。昔も今も、日本の大学は「入るのも出るのもやさしい」のである。あなたの周囲の若者の顔を思い浮かべてごらんなさい。大学を出ていても、頭の中は幼稚園レベルなのばっかりでしょう。「なんで、こんな奴が大学を出ているんだ」と私は悲憤に耐えないが、あなたはそうは思わないのでしょうか。

さらに問題なのは、十八歳人口の激減によって、入試がどんどん易しくなっていることだ。「東大はどんどん易しくなっている。そして、他の大学との格差はどんどん開いている」と言った人がいた。その意味、ちょっと考えてみてね。

 

「アメリカの大学は入るのが易しい」というのは半分は本当だ。日本からアメリカの大学へ行く連中の大半は、日本でまともな大学に入れなかったから、アメリカの大学で箔を付けるために留学する。もちろんそんな連中だから、アメリカの超三流大学(DQN大学/ドキュンと読む)を目指す。日本だって、DQN大学は誰でも入れる。

たいていの人は、日本の一流大学とアメリカの三流大学を比較して、「日本は入るのが難しく、アメリカは易しい」と言っている。

さらに、アメリカの大学は、カネとコネで入れる。DQNだけでなく、一流大学でも同じだ。日本の政治家や実業家や芸能人の子弟がアメリカの一流大学に入った場合、日本でまともな大学を出た人でない限り、カネかコネで入ったと推察して間違いない。カネかコネのある人にとっては、アメリカの大学は入るのが易しいのだ。

 

かつて、首相の息子がコロンビア大学(超一流大学)の大学院へ入った。この人が政治家になった頃、yahooの「知恵袋」(Wikipedia参照)で、さる弁護派が「アメリカの大学には外国の首相などの子弟を採用する正式な枠があるのですから、ズルではありません」と言っているのを読んだことがある。私は笑い転げた。

そういう制度が存在すること自体がズルだと言っているのだ。この人は個人の犯罪は許せないが、体制側の組織的犯罪は犯罪でないと言っている。与党が選挙制度を自党の有利になるように変えてしまっても、ちゃんとした法律になったから、不正ではないと言っているようなものだ。「しんじろおぼかたこむろけい」は人生をズルで渡って来たのだ。

それにしても、小保方氏がスタップ細胞を引っ提げて颯爽と登場した時、朝日新聞は、「AO入試で入った学生は、偏差値教育に毒されていないから、創造性がある」と書いたものだ。これを書いた論説委員、恥ずかしくないのかね。

 

具体的にどういうズルが行われているかを知りたければ、下のURLを検索して下さい。

https://www.twinzero.net/koizumi-shinjirou-daigaku

 

ブッシュ・ジュニアは「米国史上一番知性のない大統領」と言われる。(二番目に知性のない大統領はブッシュ・シニア) ところが、この人は、エール大学を卒業して、ハーバード・ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取っている。MBAは日本の司法試験に匹敵するエリート資格だ。これもズルで取れるというわけだ。

教育制度を比較すれば、日本の方がアメリカより優れていることは誰の目にも明らかなのに、日本の愚かな教育関係者はアメリカの真似をしようとして、せっかくの伝統を破壊してしまった。