移民問題 今なお響く西尾幹二氏の直言(その1)

最近、日本の各地でさまざまな国籍の外国人をよく見かけるようになった。私の住む街でも明らかに増えている。少し恐いくらいだ。

日本は昔、外国に本国人を送り出す「出移民」の国だった。それが1980年代後半になるとバブル経済による人手不足解消のために外国人労働者の受け入れが始まり、「入移民」の国に変化した。

以降、入管法(正式名称「出入国管理及び難民認定法」)改正による在留資格の緩和や外国人留学生の推進などといった積極的受け入れ路線を取っている。実際のところは企業の論理で安い労働力確保ばかりを優先し、その移民の生活、教育、医療、社会保障は後回しである。移民(不法移民も)による犯罪にも無防備なことが多い。

こうした移民問題に早くから警鐘を鳴らしてこられたのが、今月1日に亡くなられた西尾幹二氏である。

西尾氏は1989年に『「労働鎖国」のすすめ』を書かれ、外国からの労働者受け入れ積極論は危険を孕んでいると主張された。

2008年には自民党が、今後50年間に1,000万人の外国人を迎え入れるという提言を出した(「人材開国!日本型移民政策の提言」)。それに対しても西尾氏は「改めて直言する『労働鎖国のすすめ』」(『正論』2008年9月号)を書いている。

さらに2018年12月13日に産経新聞「正論」には「『移民国家宣言』に呆然とする」を寄稿されている(その年の12月8日の「入管法の改正」を事実上の移民国家宣言としている)。

この年の入管法の改正は外国人労働者の受け入れの拡大目的で在留資格「特定技能」が新設された。特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、1号の方は介護職など14の業種が対象で最長5年の在留期間。2号の方は建設、造船・舶用工業の2業種で、更新は必要だが在留期間の上限はなく、家族帯同が認められている。

これが2023年になるとさらに拡大。「特定技能2号」の業種が先の2業種から農業や漁業を含む11分野に増やした。

西尾氏は1980年後半から30年以上問題を指摘してこられた。2018年の論考も現在においてなお鋭く胸を突く。ここにいくつか紹介したい(その2に続く)