川内先生の活動報告26.「日本人の集団性と質の高い労働力」

いままでの「川内先生の教育提言」シリーズの名称は、今後は「川内先生の活動報告」と
変更いたします。

今回は活動報告26.日本の教育は諸外国と比べるととても素晴らしいそうです(仁)。

川内時男先生の活動報告 (元徳島県公立中学校校長)

26、我が国を支える日本人の「集団性」と質の高い労働力

 

 我が国は世界でも希なほどに便利で快適な国です。 当たり前のように水道水が飲めて、 郵便物は当然のように届き、女性は平然と夜の街を歩きます。社会は精密機械のように   機能し、警察官から理不尽な暴力を受けることがなく、また権力者の悪口を言っても逮捕  されることがありません。

多くの日本人はこれを当たり前のように思っているでしょうが、こんな国が他にあるで
しょうか。これらは日本人だからこそ出来るのです。こう言えば「そんなこと、その気に  なればどこの国でもできるではないか」と思われるかも知れません。

 また「集団性」などと言うと条件反射のように「戦前の軍隊教育」と拒絶反応する人が
います。しかし9年間を海外で暮らして分かったことですが、これは日本人の質の高い労
働力があればこそ出来る奇跡なのです。「日本人の労働力の質の高さ」と言えば、多くの
人は職人がもつ「匠の技」を連想するかも知れません。それも労働力の質の高さでしょう
が、今私が言っている労働力の質というのは、「労働力の信頼性」ということです。

具体的な例でお話ししましょう。 私がチリ、メキシコにいた頃に何度も経験したことです。 衣料品専門店で買い物をする場合、店員と話をし購入する品物が決まると、まず店の奥にあるカウンターで金を支払い、領収証を貰い、それを商品受け取りカウンターで渡して商
品を受け取るという、ややこしい手順を踏みます。

つまり客一人が服を買うのに、客に応対する店員、金を受け取る店員、商品を手渡す店員と、3人もの別々の店員が関わるのです。

「大都会の役所ではあるまいし、なんでこんな非効率なことを」と不思議に思っていま  したが、ある日系の方から話を聞いて納得しました。「客との応対、現金の扱い、賞品の  受け渡しを一人の店員に任せると、商品や現金をネコババするなどの不正が起こるから」  ということでした。つまり店の経営者は店員を信用していないのです。

学校の事務員に「××色の画用紙を買ってくるように」と頼んだら、数日待っても画用紙 が届かない、本人に聞いてみると「頼まれた色の画用紙がなかったから」と言います。  「それならそうと、店にいるときなぜ学校に連絡してこないのか」と聞くと「そんなこと  は言われていないから」と言って平然としています。言われたこと以外は一切しない・・・ 全く子供の使いそのものです。いや日本なら小学生の子供でも、それくらいの気は利かせ  るでしょう。

昨日や今日に雇ったおばちゃんをレジに立たせて現金を扱わせる日本は、彼らから見れ  ば信じられないことでしょう。それほど日本人の労働力の質は高いのです。

大事なことは、このような日本人を多数生み出している原動力は教育(学校教育だけとは  限りません)の力だと言うことです。

「近頃の若いモンは」と愚痴をこぼしている年配者の皆さん、私は断言します。彼らは
さほどに無能ではありません。街をうろついている茶髪の兄ちゃんでも中南米へ連れて行
けば間違いなく「超」がつくほどの優等生です。

こういう若者を数多く輩出している日本の社会・・・まさに「教育は国の礎」です。