新聞倫理綱領というものがある。その5項目は、「自由と責任」「正確と公正」「独立と寛容」「人権の尊重」「品格と節度」とある。
綱領とメディアの現状とのあまりに乖離しているのは、「日本学術会議」の報道一つを見ても明らかである。つまり現実のメディアは、この倫理綱領に沿ってないと言わざるを得ない。
本日(令和2年11月15日)の産経新聞で、酒井信彦氏がメディアを糾弾されている。(生)
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毎年10月15日から新聞週間が行われる。この機会にと思って、日本新聞協会のホームページを見てみると、「新聞倫理綱領」なるものが存在していることを知った。これは平成12年6月に、それ以前のものから改定したという。
まず前文があり、次いでそれを敷衍(ふえん)した5項目を列挙して解説している。その綱目とは、「自由と責任」「正確と公正」「独立と寛容」「人権の尊重」「品格と節度」である。通読して、この綱領とメディアの現状とのあまりにも大きな相違には、はっきり言って開いた口がふさがらない。つまり現実のメディアは、この倫理綱領に、違反したことばかりやっていると言わざるを得ない。
例えば、「自由と責任」では、「表現の自由は人間の基本的権利であり、新聞は報道・論評の完全な自由を有する。それだけに行使にあたっては重い責任を自覚し、公共の利益を害することのないよう、十分に配慮しなければならない」とあり、「独立と寛容」では、「(前略)新聞は、自らと異なる意見であっても、正確・公正で責任ある言論には、すすんで紙面を提供する」と言っているのである。
日本新聞協会の創立(昭和21年)の背景には、占領中のGHQ(連合国軍総司令部)の意向もあったとされる。現在問題になっている日本学術会議と同様な歴史的背景があるわけで、したがって同じような体質を有しているのであろう。つまり戦後占領体制の申し子なのである。
今年は三島由紀夫が自決して50年になる。三島が徹底的に憎悪したのは、戦後日本人を支配している「偽善」であり、これこそが三島を理解するためのキーワードである。サンケイ新聞夕刊に掲載された「果たし得ていない約束」の冒頭で、三島は「戦後民主主義とそこから生ずる偽善というおそるべきバチルス」といい、近年刊行された『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』(講談社)でも、「平和憲法です。あれが偽善のもとです」「憲法は日本人に死ねと言っているんですよ」と述べている。
三島の発言は昭和45年、戦後25年のものである。今はそれから倍の50年もたっているが、偽善の度合いは減少するどころか、はるかに深まっているといえる。自らが全く守っていない、偽善に満ちた日本新聞協会の倫理綱領を日本国民はほとんど知らないから、厚顔無恥なメディア権力は、大きな顔をしていられるのである。
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【プロフィル】酒井信彦
さかい・のぶひこ 昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂(へんさん)所で『大日本史料』の編纂に従事。