●教科書調査官スパイ疑惑事件(2020年)
これは検定が終わった後で発覚した事件です。『アサヒ芸能』という週刊誌が「『北朝鮮スパイ』リストに『文科省調査官』」(の名前があった)という大見出しでスクープ記事を掲載しました。それは昭和37年3月8日生まれの中前吾郎氏であり、歴史の主任教科書調査官であり、『初期毛沢東の思想』という著作もある毛沢東崇拝者です。
我々は文科省に対し、これは問題ではないかと質問状を提出しました。そもそも報道が誤りならばすぐにでも本人が記者会見を開いて否定すべきです。
これに対し文科省は即座に動き、新聞は「教科書調査官北スパイ報道」「萩生田文科相『事実確認されず』」(と発表した)と報道するに留まりました。
我々はこれは見過ごされてはならない問題として、2021年9月21日に国家賠償請求訴訟を提訴しました(文科省の令和元年度検定において「違法検定」がなされ、その結果著しい損害を被ったとして)。原告は株式会社自由社、被告は国(法務大臣)に加え、検定の実質的責任者である中前吾郎主任教科書調査官、村瀬信一教科書調査官(自由社担当)、黒沢文貴教科書検定審議会社会部会歴史小委員長の3人です。この訴訟は継続中です。
●なぜ、こんなデタラメな不正が可能なのか
それは「不正検定」を可能にする3つの「曖昧さ」が存在するからです。
①検定基準の用語の曖昧さ:自由社の教科書についた405件の検定意見の7割以上が「生徒が誤解するおそれがある表現である」でした。しかし、そう言いだすとどんな言葉も‟生徒が誤解するおそれ“になる非常に曖昧な用語です。
②検定対象の曖昧さ:東京書籍の地図の検定サボタージュ事件が発覚してから「索引は検定対象ではない」、「誤記・誤植は検定対象ではない」などと言い出すものがあった。しかし地図において索引の誤り、誤記・誤植は致命傷である。
③法的根拠の曖昧さ
こうした曖昧さこそ不正検定の温床になっているといえるでしょう。
●藤岡先生の提案する教科書検定の改善プラン
私は検定をすべき項目は、明らかな間違い(事実の間違い)、誤字・誤植にとどめるべきと考えています。表現が優れているとかいないとか、それは教科書を採用する側が判断すればよいわけで、「生徒が誤解をする」といった曖昧な基準は一切なくすべきです。
もう一つのプランは、検定意見を2種類に分け、「修正意見」と「改善意見」とし、「修正意見」」は必ず修正しなければ合格できない意見、「改善意見」は‟こうした方がいいのではないですか”という意見で、必ずしも従わなくてもよい。
検定は(決定的な間違い以外)抑制的でなければならないと我々は主張してもよいのでないでしょうか。
●今、訴えたいこと
小学校の歴史教科書問題も深刻です。小学校の歴史教科書は3社しかないのですが、どれも自虐的です。とくに近現代がひどい。小学生の柔らかい頭に浸み込ませていくと考えると大変罪が重いといえましょう。
令和5年は小学校採択の年で、小学6年生になる孫を持つ東京都下の主婦が展示会で並んでいた東京書籍の教科書を見たそうです。気分が悪くなるほど耐え難い内容で、この教科書はやめてほしいとアンケートで訴えたそうです。
144頁に次のような文章があります。「戦時中の教科書(左)とすみぬりの教科書(右) 教科書は、戦争中のものがそのまま使われましたが、軍事教育に関するような内容は不適切だとして、すみで消されました。」
それに対応するように155頁にコラムがあります。その文章が「憲法についての教科書『あたらしい憲法のはなし』の平和主義に関する内容(一部)」というものです。
ここでいう『あたらしい憲法のはなし』は教科書でなくパンフレットで、日本国憲法を礼賛する内容です。
コラムには「こんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。(中略)これからさき日本は、陸軍も海軍も空軍もないのです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」と書かれています。
これは何ですか!ウクライナで、イスラエルでも戦争が起こっています。とくにウクライナでは核廃棄をしたからロシアが侵略するのが可能になったともいえるのです。
このような教科書は、現実の国際社会に対して全く抵抗できない、政治的にも殆ど国民を「バカ」にしてしまう強烈な洗脳効果を持っています。
このような両頁にわたる記載の組み合わせ、恐ろしいことに他の2社も全部同じなのです。日本の安全保障を1ミリも考えていない学者たちが教科書をつくり、小6の歴史教科書を独占している、これは許せないことです。日本の小学生がこういう教育を必ず受けるとなれば、本当に愚かな国民になってしまいます。
この問題を令和6年1月28日のシンポジウムで取り上げます(星陵会館ホールにて)。
中学校は令和5年が検定、令和6年3月に結果が出て4月から採択に入ります。
是非今後ともお力添えをお願いいたします(盛大な拍手をもって講演会終了)(文責:和)