河添恵子著『習近平が隠蔽したコロナの正体』を読んで(3)

「中国と諸外国の複雑な関係」

しかし悩ましいのは、ウイルスを拡散させた中国と被害をうけた世界の国々、という単純構造にならないことである。問題の「武漢ウイルス研究所」だが、江夏区にある新しい方の研究所建設にあたっては実はフランスも絡んでいた。

  • 新しい研究所とフランス

SARSの流行した翌年2004年1月に胡錦濤中国国家主席はフランスを訪問し、シラク大統領と会談。「中仏予防・伝染病の制御に関する協力」の枠組みの話し合いをし、10月には協力合意書に調印している。この目的はP4実験室が備わるウイルス研究所を設けることだった。

フランス政府でこの中仏合同プロジェクトに深く関与してきたのが、シラク大統領、サルコジ大統領、外交官で医師のベルナール・ジャン・クシュネル氏。そして資金集めの組織「フランス中国基金会」を設立。フランス側にはロレアルのジャン‐ポール・アゴン会長、ケリング・グループ(グッチ、サンローラン)のジャック・アタリ氏、そしてメリュー財団会長のアラン・メリュー氏がいる(メリュー研究所は結核や破傷風など感染症の研究をしている)。

これだけフランスが入れ込んでいた研究所(P4実験室)だったが、次第に不信感が高まっていた。

2020年4月17日の仏国際放送局(RFI)の報道では「フランス国内には、中国武漢に『P4実験室』を造る計画の妥当性を疑問視する声が以前から相次いでいた。おもな理由は~恐ろしいほどに透明性に欠けていること~」「P4実験室も~『生物兵器庫と化してしまうのではないか』との不安も高まっていた」とある。

  • アメリカのアンソニー・ファウチ博士と武漢ウイルス研究所

米国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士はコロナ禍の救世主と思われた人物だが、ここにきて武漢ウイルス研究所との親密な関係が明らかになった。

NIHがニューヨークの非営利団体「エコヘルス・アライアンス」を通じて、5年間で少なくとも60万ドル(約6600万円)を助成していた。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙は「送金額は340万ドル(約3億7千万円)」と報じているそうだ。

昨年3月、ファウチ博士は中国科学院大学の高福教授とのメールのやりとりの中で、「私はすべて理解しています。問題ありません。私たちは一緒にこれを乗り越えましょう」と返信していた。またファウチ博士はゲイツ氏らに、武漢ウイルスが天然発生に見えるよう、普及協力を要請していたのである。(WiLL2021年8月号「研究所にはさらに強力なウイルスがある」河添恵子氏参照)

フランスもアメリカも一枚岩ではない。しかし必ず反論があり、追究の姿勢がある。中国にやられっぱなしで死を待つなどあり得ないのである。