川内先生の教育提言24.「これほど違う欧米と日本の学校」

川内先生の教育提言24.をお送りします。日本の教育が無批判に欧米の教育に近づくと一層モンスターペアレントが増えるかも...(仁)。


川内時男先生の活動報告
(元徳島県公立中学校校長)

24、これほど違う欧米と日本の学校(拡散希望!)
 前回は欧米教育と日本の教育の違いについて述べましたが、この違いは当然、学校に対
する認識の違いとなって表れます。欧米と日本の学校の違いと言われても、多くの人はピン
ときません。ということは日本の教育がそれだけ欧米化してきたと言うことでしょう。しか
し実は大きく違うのです。
 欧米人が「学校は子供達が楽しく過ごしながら勉強をするところ」と考えるのに対して、
日本人は「学校は子供が学力を身につけ心身を鍛える道場のようなところ」と考えています。
「楽しく過ごす場所」と「道場」、意味が全く正反対です。「楽しく過ごす場所」は「生き
生き伸び」につながり、「道場」は努力と忍耐の強制につながります。
 
 私がグアダラハラ補習授業校(在メキシコ)で勤務していた時、校舎やその他の関係で
メキシコの教育に触れる機会が多くありました。メキシコの教育は欧米流ですが、そこで
知ったことは、メキシコでは教師が完全にサービス業になっており、教師が子供や保護者
の「ご機嫌」をとるのに熱心だと言うことです。

 子供が問題を起こした時には、教師は「それは子供が悪いのではなく、子供をそうさせ
ている原因が他にあるからだ」と言って、子供や親の責任にはしません。例えば子供の成
績が悪かった時、親は「うちの子供の成績が悪い。先生達はどんな指導しているのか」と
学校を責めます。すると教師は「あなたの子供は優秀でよく頑張っている、しかし今回は
××があったりして運が悪かった」として子供を庇います。というより、こう言って教師は
親の追及をかわしているのです。

 子供に問題行動が続けば「あなたの子供がそんな悪いことをするはずがない。何か病気
かも知れないので一度医者に診てもらってはどうか」などと、日本では考えられないよう
な対応をします。要するに学校で何があっても子供や親の責任を問わないのです。親も親
なら先生も先生です。
 学校を「人生の道場」と考える日本人とは大違いです。 日本では担任教師に「うちの子
をビシビシ鍛えてください」と頼む親を見かけますが、メキシコの親が聞けば「自分の子
供を虐待してくれと頼む親がいるのか!」と目を丸くすることでしょう。こういう環境で
育つのですから、何かにつけ、他に責任転嫁しようとするメキシコの国民性も頷けます。
  
 この話を聞いて笑った方もおられたでしょうが、実は人ごとではありません。我が国で
も教育が欧米化するにつれて、自分の子供の非を棚に上げて学校に怒鳴り込むモンスター
や、子供が悪いのではない、悪いのは大人だ」と考える教師が増えているのです。

 とは言っても欧米の学校とは違い、日本の学校にはまだ「頑張れ文化」が生き残ってい
ます。しかし現代の潮流は、子供が苦痛と感じるものをできるだけ排除し楽にしてあげよ
うとする「はき違えた子供中心主義」が花盛りです。学校が「道場」でなくなる日は近い
かも知れません。
(今回、ついメキシコ人のことを悪く書いてしまいましたが、太陽にように明るく、おお
らかに生きる彼らを私は大好きです。念のため)