コロナ封じ込めの台湾に学ぶこと

中国の武漢で新型コロナウイルスの感染が発覚してから1年以上が経過しました。

米ジョンズ・ホプキンス大学の発表によると、4月11日現在で世界の感染者数は1億3535万人、死者は292万人に上っています。最も多いアメリカでは感染者が3115万人、死者56万人に比べ、台湾は感染者1056人、死者10人(日本は死者9405人)。国の規模が違うとはいえ、極端に少ないと言えるでしょう。

台湾では、どうして見事なまでにコロナを封じ込められたのでしょうか。

それは初期動作の速さ、政府の的確な対策・処置、そしてその政府に寄せる国民の信頼と協力によると言えます。

2019年12月31日、台湾CDC(台湾衛生福利部疾病管制署)報道官の羅一鈞はSNSの掲示板に「武漢でSARSに似た感染症が発生している」という投稿を発見します。さらに情報を収集した結果、「新型と見られる肺炎はヒトからヒトへ感染する可能性がある」と分かり、台湾CDCの防疫グループにその日のうちに報告しました。同時にWHOにも報告しています。

台湾国内で、中国で感染症が流行しているという情報が広がり始めたのは2020年1月中旬。マスク不足への不安も広がりつつありました。

1月末には台湾政府は防疫政策の協議をし、マスクの確保、デマ情報の取り締まりをします。

マスクの輸出禁止、そして国家を挙げてマスクの国内生産化、増産を成功させます。

買占めを禁じ、さらにこのマスクを国民に平等に行き渡らせるため、本人確認をして決まった数を販売することにしました。ここで国民全員が保有する健康保険カード(全民健康保険証)を活用します。

このカードにはICチップが搭載され、個人の診療記録、投薬記録等が記録されています。このデータを国の様々な機関が共有しており、これを購買記録と繋いでマスク実名販売ができたのです。

またデマ情報を取り締まるため、政府は正しい情報を提供するため頻繁に会見を行いました。

2020年1月20日に中央感染症指揮センターを開設、23日には陳時中・衛生福利部長(厚生大臣)がそのセンターの指揮を執ることになりました。この日から記者会見は陳時中指揮官が主宰、他の大臣も列席し、記者の質問が終わるまで毎日のように行われました。

細かい質問に対し、詳細な事実関係の説明がなされるので、憶測の入り込む余地などありません。

こうした政府の対策、処置に対し、国民は全面の信頼を寄せていることも注目すべきでしょう。健康保険カードも、いうなれば個人情報満載カードであり、それを国の機関に提供しているのですから。

このような信頼関係が構築できたのはどうしてでしょうか。

それは2003年に台湾を襲ってSARSの手痛い経験があるからでしょう。2002念11月から2003年7月にかけて中国南部を中心に広がったSARS。台湾はWHOに加盟していないため、その情報を入手するのが遅れました。台湾では院内感染が発生し、病院封鎖のパニックが起こりました。結果として台湾の感染者は346人、死者81名を出してしまったのです。

WHOも信じられない。中国からは妨害を受ける。

そこから台湾は独自にウイルス感染対策を講じ、2011年には「戦略計画」が出来ていたといいます。政府と国民が一枚岩になって、このコロナと戦ったのです。

私たち日本人が台湾に学ぶべきことは、有事における国民と政府の信頼関係でしょう。

そしてWHOや中国の実態がまざまざと見えた以上、もはや私欲や政局にかまけている場合ではなく、国民の生命保護、国家防衛について真剣に向き合わなければならないということです。(和)